Pilot
 74年発表の1st。デヴィッド・ペイトン(b、vo)、ビル・ライオール(k、vo)、スチュワート・トッシュ(dr、vo) の3人で結成されたブリティッシュ・ポップの神髄とも言えるグループのデビュー作。プロデュースはアラン・パーソンズが手掛けているが、パイロットの作品は4作目(ロイ・トーマス・ベイカーが担当)以外は彼が手掛けており、この瑞々しいサウンドの一旦を彼が担っていることは間違いないが、彼にとってもこのグループの存在は大きかったはずで、メンバーは本作にゲスト参加して次作からは正式メンバーとかるイアン・ベアンソンも含めてアラン・パーソンズ・プロジェクトのバック・メンバーとして長らく活動を共にすることとなる。楽曲も強力でおそらく誰もが一回聞けば虜になるタイトルそのままの奇跡の一曲「マジック」は70年代というロック/ポップスの黄金時代においても一際輝く名曲。この一曲が後のパワー・ポップに与えた影響は計り知れないだろう。もちろん他の曲も凄まじくクオリティが高く、それを鉄壁なアレンジと手堅いだけでなく勢いとフレッシュさを持った演奏で支え、ハイトーンのヴォーカル/ハーモニーで仕上げるという誰もが思い付くが、なかなか成功しない手法を具体化している。彼らが後に先のAPPや10cc、キャメルなどで引っ張りだことなるのは全てが平均点以上の優等生であっただけではなく生み出された楽曲に情熱や夢が詰まっていたことに他ならない。それは本作を聞けば誰しもが分かるはずである。 David Paton (b、g、vo)
Bill Lyall (k、fl、vo)
Stuart Tosh (dr、per、vo)
・Richard Hewson (orch.arr.)
・Tony Gilbert (leader)
Ian Bairnson (g)
・David Mason (pico-tp)
・Nick Heath (spoken)
Alan Parsons
Second Flight
 75年発表の2nd。前作同様にアラン・パーソンズのプロデュースしており、本作からイアン・ベアンソン(g) が正式メンバーになった。本作は不朽の名作である彼らの1stを超える作品ではない。もちろん世紀の名曲「マジック」を超える楽曲は含まれないが、それに準ずるような瑞々しくもポップな楽曲がギッシリと詰まったブリティッシュ・ポップの神髄のような作品である。“弾ける”という表現は彼らのような突き抜けたポップ性を持ったグループにピッタリの表現だと思う。そのポップな楽曲を足腰のしっかりした演奏で支えており、仕上がりも完璧。彼らはポップさという意味ではビートルズを超えている・・・とまで誇張したくなるような類い稀なメロディアスでポップな楽曲を多数残した最高のグループ。パイロットこそブリティッシュ・ポップのMt.エベレストだと思う。ハンド・クラップを聞くだけでワクワクするぞ。新鮮なレモンを絞るかのような全曲が名曲。
4.のインストも最高。10.は全英チャートの1位になった。
Bill Lyall (k、fl、vo)
Stuart Tosh (dr、per、vo)
David Paton (b、g、vo)
Ian Bairnson (g)
Alan Parsons
 
Morin Heights
 76年発表の3rd。双頭リーダーの一人とも言えるビル・ライオールが前作で脱退。前作までのアラン・パーソンズに変わって、ロイ・トーマス・ベイカーがブロデュースにあたった作品。
1.はモロにファンクなハード・ロック。従来のパイロットとはかなり異なった雰囲気を持っており、それはヴォーカルとギターに顕著に現れている。クラヴィ、エレピのトリルなど演奏そのものもちょっと違う印象。しかし2.になると典型的なパイロットのサウンドに戻る。激ポップな楽曲にハイ・トーンのコーラス、そしてちょぴり哀感を漂わせたメロディがじわじわ利いてくる。3.も相変わらずのパイロット節だが、やや重低音が利いた感じ。ここらあたりがプロデューサーの違いかもしれない。4.はビートルズ伝統とも言うべきポップなアコースティック・ナンバー。10ccばりのコーラスも導入されている。5.もポップなハード・ロックといった印象。ジェット・マシーンが懐かしい。6.も彼ららしいポップな曲。末期10ccやアラン・パーソンズ・プロジェクトを感じさせるなかなか佳曲。10.はこのアルバムのハイライトとも言うべきド派手なハード・ロックの力作。この曲に関してはクイーンとの類似性を挙げても差し障りはないと思う。
一般に言われるほどサウンドが激変しているわけではないが、プロデューサーの違いはハッキリと分かる。これは明らかにそこの好みだけだろうが、ややシャキっとしたサウンドはなかなか魅力的。そして何よりも突き抜けるかのように印象的なフレーズを聞かせるギターが素晴しい。全体的に憂いを帯びた哀感を感じさせるのも魅力。
David Paton (b、g、vo)
Ian Bairnson (g、vo)
Stuart Tosh (dr、per、vo)
・Roy Thomas Baker
 
Two's a Crowd
 77年発表の4作目。本作を前にスチュワート・トッシュが脱退。グループはペイトンとベアーソンの二人組となり、レコード会社をアリスタに移籍して発表した作品。前作の商業的な失敗を受けてか再びアラン・パーソンズがプロデュースにあたっている。近年までなかなか再発されず、メンバーも業を煮やしたのか、02年の復活作『Blue Yonder』ではこのアルバムの収録曲8曲を再録音している。1.は前作のハード・ロック路線をやや受け継いだ雰囲気。強力なギターのイントロだけでイチコロだが、メロディのひねりもジワジワと聞いてくる佳曲。ストリングスも上品だ。2.は重圧だが涼し気なコーラスが印象的なバラードの佳曲。3.はシンベのリフが印象的。初期の彼らの雰囲気を濃厚に持った穏やかな曲だ。4.は映画の挿入歌のような美しい曲。やはりストリングスが効果的に使われている。8.は完全に10ccである。パイロットは本作で一端解散するが、本作のクオリティは1stにも並び賞されるべきほどのレベルであり、決して創作意欲の喪失からのものでなかったことは確か。 David Paton (b、g、vo)
Ian Bairnson (g、vo)
・Steve Swindells (k)
・Trevor Spencer (dr)
Andrew Powell (orch.arr.)
・Henry Spinett (dr)
・Marliyn (vo)
 
Alan Parsons
 
Blue Yonder
 02年発表。77年の『Two's A Crowd』以来25年振りとなった再結成アルバムで、メンバーは前作と同じデヴィッド・ペイトンとイアン・ベアンソンの2人。2人はパイロット活動停止後、アラン・パーソンズ・プロジェクトやキャメルなど多数のグループのメンバーとして、またセッション・メンとして活動。本作は02年当時、唯一CD化による再発がされていなかった前作『Two's A Crowd』(本作発表後には再発)収録曲のリメイクに新曲を加えた内容で、更に国内盤には1stアルバム収録曲のリメイク11.とデヴィッド、イアン、ビリー・ライオール、スチュワート・トッシュの4人時代(75年)のライヴ12.を追加している。
長い間隔のあいた再結成アルバムにはガッカリするものが多いが、本作に関しては1.のイントロだけでも既に十分に期待に応えてくれるはず。例え裏方であっても現役であった彼らはヴォーカルもほぼ衰えを知らず、長い休止期間がウソのようなあの時代そのままのサウンドも健在である。パワー・ポップの源流の一つである希代のポップ・グループの名に恥じない作品である。
David Paton (b、g、vo)
Ian Bairnson (g、vo)
・PILOT
A's, B's & Rarities
04年発表の編集盤。パイロットのシングルのAB面を年代順に収録、そしてデヴィッド・ペイトンのソロ・シングル曲のAB面(21.22.)を収録した編集盤。彼らのシングル発表の詳細は不明だが、76年までのシングルが収録されていることから、おそらくはアリスタ移籍前、すなわち1st〜3rdアルバム発表時期までのシングル曲が網羅されているものと思う。アルバム未収録は2.9.13.14.18.の5曲に先のペイトンのシングル曲の21.22.の2曲の合計7曲。もしかすると近年の再発期にボーナス・トラックとして追加収録されている可能性もあるが、どの曲もアルバム収録曲と遜色のないクオリテイの高いものなので、それらを目的に本作を入手する価値はある。
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